CROSS TALK 対 談 研究職:CNS領域
- 探索合成
- 薬理研究
患者さんに新たな治療の選択肢を。
一歩一歩着実に
候補化合物を医薬品に育てていく
-
探索合成 入社8年目

化学研究ユニット
化学研究第2グループF.Y.
工学研究科 修了
2018年入社 -
薬理研究 入社7年目

CNS創薬研究ユニット
神経変性疾患創薬研究グループF.K.
生命科学研究科 修了
2019年入社
住友ファーマの重点領域のひとつ、CNS(精神神経)領域。
精神疾患(統合失調症、うつなど)と神経疾患(認知症、パーキンソン病など)、
それぞれの疾患分野を対象に、低分子による創薬研究に取り組む社員たち。
研究プロジェクト制のもと、それぞれ異なるテーマを担当する探索合成と薬理研究の二人に、
仕事内容ややりがい、研究者としての働き方について語ってもらった。
※記載内容は取材当時
CNS領域は、当社が長年研究を積み重ねてきた領域。
動物モデルからヒトへの外挿性はよく議論に上がるけれど、非臨床から臨床にいたるまでのデータもノウハウも蓄積されてきているよね。
F.Y.
CNS領域は、当社の強みですよね。低分子での創薬実績に加え、今まさに、再生・細胞医薬でもiPS細胞でパーキンソン病などにアプローチ中。
こうした挑戦的な取り組みは、就職活動中、当社を志望する動機にもなりました。
F.K.
私も、研究員の方や人事の方から、CNS領域の難しさとそこに挑戦する意義や魅力について聞き、分子の設計・探索合成を進めるメディシナルケミストとして、「この領域に挑戦してみたい」と思った。
F.Y.
実際に低分子はCNS領域と相性がいいですよね。
F.K.
血液脳関門などのバリアに守られている脳にも、低分子なら薬を届けやすいし、他のモダリティに比べてコスト面での優位性もあるね。脳移行性を示す低分子に望まれる物性や、実際にそれを評価する体制に関する知見が当社にはある。
こうしたこれまでの研究基盤を活かし、「優れた安全性と薬物動態プロファイルを持つ化合物を継続的に供給する」ことが、私の所属する化学研究ユニットのミッション。
F.Y.
今はどんなテーマを担当しているんですか?
F.K.
今は、ある精神疾患領域のテーマのリーダーとしてメンバーとともに方針を決めたり、化合物合成を進めたりしています。ちょうど、薬の候補になり得る化合物を探索し、リード化合物へ育てるステージに進んでいる感じ。F.K.さんは?
F.Y.
私は、神経変性疾患に関する薬理研究グループに所属し、複数のテーマを担当しています。
その中のひとつ、タウオパチー(異常たんぱくが脳内に凝集・蓄積する疾患)についてはリーダーとして臨床を見据えた取り組みを始めたところですし、その他のテーマでは評価系の構築や疾患モデル作製などに取り組んでいます。
テーマリーダーって、忙しいですよね?
今、実験とデスクワークはどのくらいの比率ですか?
F.K.
最近は、実験3、デスクワーク7ぐらい? 若い時は実験9だったけど。
デスクワークは、会議や特許関連の資料作成、情報収集、あとは薬理との試験スケジュール調整とか。
F.Y.
スケジュール管理、プロジェクトを迅速に進めるためにも、大事ですよね。
疾患モデルの調整などで、薬理の試験スケジュールが変動して、恐縮です・・・
F.K.
いや、そこはお互い様だし、難しいよね。計画に間に合うように試験用の化合物をつくるのは化学研究ユニットの大事な仕事。
必要量をつくりながら、製法の改善もやっていきます。
F.Y.
薬理では、今、トランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)で臨床につなぎ、自分たちの代でちゃんと剤として出して社会に貢献していくぞっていう、機運が高まっている状態かなと思います。
CNS領域のもうひとつの柱、細胞・再生医療の「iPS-PD(iPS細胞を用いたパーキンソン病)」の臨床も進んでいるので、低分子の方もそれに続こうって。
F.K.
そうだよね。そのためにも、対象疾患への理解を深めながら、患者さんに選んでもえらえる薬となるよう、誠実に研究を推進しています。もちろん、スピードも意識して。
F.Y.
薬理も研究のサイクルを早く回して、同じ目標に向かって頑張ります!
F.K.
やっぱり自分たちがデザインした化合物が、細胞で期待した活性を示したり、動物モデルで有効性を示したりしたときはうれしい。けれど、そんな瞬間はなかなかこない。
こうした困難を分子変換で解決できるのもまた化学の魅力。
諦めずにデータをよく見て、仮説と検証を繰り返す。
F.Y.
すごくよく分かります。薬理も同じです。
F.K.
苦労の末に、化合物が細胞レベルのアッセイからモデル動物での有効性試験へと進んでいくとやりがいを感じるし、楽しい。
F.Y.
実際、ご自身が合成したもので臨床まで進んでいるものってあるんですか?
F.K.
臨床ステージということであれば、「DSP-0187(ナルコレプシーを予定適応症として国内開発中)」を見出す過程の探索合成を入社後すぐに担当していました。
探索合成は複数人でチームを組んで進めていくので、臨床候補化合物そのものを合成したわけではないし、そこに至る過程に少し貢献できたくらいだけど、そのときできた経験は、その後の他テーマでの化合物デザインにも活きていると感じる。
現在の担当テーマはこれから、というところかな。今まさに動物での有効性試験中で。
F.Y.
そうなんですね。試験結果、楽しみですね!
私も同じく、自分が立てた仮説で想定通りの結果がでたときは快感というか喜びがあります。
でも、F.Y.さんのおっしゃる通り、上手くいかないことが多く、判断できると思って組んだ実験で判断ができなかったりする。
だから、前提、コンセプトをしっかり決めて、難しい中でもなにかしらの判断ができるデータを取れるように努めています。
F.K.
実験に取り組むときのコンセプト確認が大事だよね。
F.Y.
コンセプト、大事です。なので、コンセプトを決める時にはいろいろな人と相談します。
探索合成の方からアドバイスをもらうこともあります。
F.K.
薬理から「この化合物の挙動、何か影響を受ける要素ありますか?」と相談されることも。
F.Y.
部門を横断して、すぐにチャットで相談できるので助かります。
社内外のいろいろな方との協業できるのも、研究の面白さの一つかなと思っています。
F.K.
社外って? 何かのプロジェクト?
F.Y.
実は、「GAPFREE(産学官共同創薬技術活用プロジェクト)」で当社のリーダーをやってます。
これは、アカデミアやベンチャー企業がもつ先進的な創薬技術を活用し、さまざまな障壁(ギャップ)を埋めて、創薬研究推進を目指すという産学官連携プロジェクトです。
最初は情報収集してきてって言われて取り組んでいたら、あれよあれよという間にリーダーになり、共研を開始できることに。
ゼロからテーマを立案し、マッチングしたアカデミアの先生方と連携しながら進めています。
F.K.
若手にもどんどん任せてくれる社風だからね。
F.Y.
元々自分が興味のあった内容をテーマにやっています。
かなり基礎的なテーマですが、それが今後の新たな創薬の基礎技術、知識になったらいいなと思って取り組んでいます。
F.K.
本当に、研究に対する自由度、裁量が大きいと思います。
F.K.
基本的に、「これを試してみたい」という提案は通る。
フラッシュアイデアだと難しい場合も、もう少し詰めて意図や現実性を伝えれば、前向きに話が進むことが多い。
F.Y.
薬理も同じです。
コスト面や契約上の都合などで難しい場合を除いて「やってみたい」を受け入れてくれる。
F.K.
創薬研究セクションには「20%ルール」というのがあって、それは、与えられた仕事は業務時間全体の80%の時間でこなして、余った20%は研究に関することを自由にやっていい、というもの。
F.Y.
自分の研究を深めるために20%を使っていいよ、というルールですよね。
それこそ若手の時、いろいろな実験をやっていました。全然違うテーマだけど、同じ評価系に乗せたら面白い結果がみられるんじゃないか、とか。
F.K.
薬理の同期から「こんなテーマをやってみたいけれど、ツール化合物がないから作ってほしい」という要望があって、アッセイ系を立ち上げる時のベンチマークとなるような「道具」としての化合物をつくったことも。
F.Y.
すごく意義のある20%ルールの使い方!尊敬します。
F.K.
ところで、CNS創薬研究ユニットは今年から「FIKA(フィーカ)」を開催していると聞いたけど、どんな感じのイベントなの?
F.Y.
月に1回、14時とか15時頃からお茶とお菓子を片手に語り合うお茶会です。
海外でやっているらしく、ちょっとブレイク入れることでその後の業務に活気を入れるみたいな。
気軽に参加できる社内交流の場のような感じ。
F.K.
それ、化学研究ユニットの人も参加OK?
F.Y.
もちろん、welcomeです!
最初にひとつ決まったテーマで話をして、その後は自由な感じで。
自分が知らない知識を雑談の中で知ることもあり、刺激があります。
F.K.
部署や年代を超えてコミュニケーションが促進されそう。
F.Y.
そんな感じです。
真面目な会というよりは総合研究所で年に1回あるビアフェスタみたいな交流の場でもありますね。
F.K.
今年から、猫を飼い始めて。
それはもう、ワークライフバランスが変わるな。ワークに偏らなくなる(笑)
早く帰らないと、猫が玄関で待っているので帰宅が早くなりました(笑)。
充実しているな・・・ちょっと鮎を獲ってる人には勝てない。
入社1年目に、年間パス持ってましたよ。
福利厚生の「WELBOX」で、年間パスが買えるもんね。
ありがたいですよね。ありがたいといえば、裁量労働制や在宅勤務も助かりますよね。
勤務時間も自分で調整できる。もちろん、ちゃんと成果を伴わなきゃいけないけど。
実験の進捗をみながら、余裕がある日は早めに上がって、次の日ちょっと長めに働くとか。
制度があるおかげで時間の使い方をよく考えるように。
本当にそうですね。
これまで非臨床の初期よりのテーマを担当していたけど、今後は少し変わって後期のテーマのステージアップに携わることに。臨床開発の人たちと関わりながら仕事を進めていくので仕事の幅が広がるのかな、と思っています。
薬理担当として臨床開発へどんな風に橋渡しをしていくの?
非臨床での安全性、有効性を臨床でどう検証し、有効性を示していくのか。
それは私も同じ。自ら設計した分子が薬として承認されて、新薬としてちゃんと患者さんまで届く、これはメディシナルケミストの大きな目標。
ちゃんと薬として世の中に出て、患者さんの選択肢になるところまでが見れたら、本望ですよね。そのために頑張るぞ。今やるぞっ!という思いです。
探索合成は、新薬の出発点をつくる仕事。
中毛のスコティッシュフォールドなんですけど、あまりにも可愛くて。
F.K.
F.Y.
それ以外は、時期によって、鮎やホタルイカを獲って料理をしたり、普通に釣りに行くこともあります。
F.K.
私は、妻と一緒に買い物行ったり、映画に行ったり。
研究所は大阪市内なので、梅田や難波へのアクセスもよく、便利で生活の充実度が上がる。
大型テーマパークもすぐそこだし。
F.Y.
F.K.
F.Y.
F.K.
F.Y.
F.K.
学生時代は研究室に長く居ることがいいような雰囲気があったけど、今はそうではないかな。
入社前にドイツに研究留学したときに、研究とプライベート、メリハリのある生き方の大切さを知れたのも大きかった。大切なのは、どうやって効率的にやるか、だよね?
F.Y.
ワークもライフも大切に考え、それぞれのライフステージでいきいきと働けているな、と感じます。
F.K.
F.K.
探索合成だと、非臨床段階から臨床段階へと相移行していくときは、ラボレベルの合成から商用生産に向けたスケールアップを図るためにプロセス研究ユニットをはじめとするCMC部門にプロジェクトをつなげていく感じ。
F.Y.
その業務はまさにこれからやっていくので楽しみです。そして、最終的には、薬が世に出るところを見届ける、それが私の叶えたい夢。
F.K.
自分が作ったという自負をもって研究を進め、その目標を達成したいなと思っています。
F.Y.
F.K.
夢が叶ったかどうか、わかるのはまだ先になるけれど、ちゃんと実現できるようにチャレンジを続けていきたい。
F.Y.
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