CROSS TALK 対 談 研究職:がん領域
- 探索合成
- 薬理研究
一つでも多くの高質な開発化合物を創出し、
薬に育て上げて患者さんへ届ける。
その使命感と研究の楽しさが心を動かす。
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探索合成 入社12年目

がん創薬研究ユニット
モダリティ研究 第1グループI
薬学系研究科 修了
2014年入社 -
薬理研究 入社6年目

がん創薬研究ユニット
がん薬理研究 第1グループK
薬学府臨床薬学 修了
2020年入社
住友ファーマは、注力する領域の創薬を強力に推進するために、
研究テーマを単位とした「プロジェクト制」をとっている。
テーマ発案者等がリーダーとなり、部署横断でテーマに取り組み、
初期臨床開発段階までプロジェクトを進めていく。
血液がん領域のテーマに取り組む、探索合成と薬理研究の二人に、
プロジェクトについてや仕事のやりがい、研究者としての働き方について語ってもらった。
※記載内容は取材当時
現在、私はプロジェクトリーダーとして、血液がんの分子標的治療薬の研究プロジェクトを進めています。プロジェクトは、薬理や薬物動態、安全性など部署横串のチーム編成で、その薬理メンバーがKさん。
I
私は薬理担当として、Iさんたち探索合成の方がつくってくれた化合物が、狙った標的に作用し、薬理効果を発揮するか否か検証するために、評価系を考え、提案しています。
K
Kさんは、普段のルーティーン評価に加え、選んだ化合物の中から臨床候補入りが狙える化合物を選ぶための高次評価系を構築してくれています。
I
様々な角度から、化合物をいじめ抜くためのアッセイ系を考えています。(笑)
K
今やっているテーマは、リバーストランスレーションといって、治験結果を含む臨床現場から得られた医療ニーズを基礎研究に取り込み、新たな知見やシーズを生み出す方法を活用していて。臨床で出てきた課題を解決するために、それにフィットするような化合物を作ろうと一生懸命デザインしています。
I
薬理研究者としては、臨床で出てきたその医療ニーズを、どのようにヒト病態を反映した評価系へ反映させるか考えています。
特に今のテーマは情報のアップデートが早く、競合もいて変化が激しいですよね・・・
K
うん、でも、当社は現在血液がん領域の臨床段階に、すでに「Enzomenib」や「Nuvisertib」など、競争優位性があると思われる開発剤が上がっていて、そのおかげで専門性の高いKOL(Key Opinion Leader:特定分野で影響力を持つ専門家)と強いコネクションがある。
I
そもそも「Enzomenib」はアカデミアとの共同研究が発端。
臨床現場と当社のメンバーがお互いを高め合いながら臨床を進めている。
そこで培った人脈や情報、ノウハウはいち早く研究に共有され、関連する研究に活かせることは大きな強み。
K
臨床で見つかった現象が情報としてオンタイムにくる!
先生方がどういった剤を求めているかが分かるというのは大きい。
I
本当にそうだと思います。臨床ニーズを逆算し、剤を評価していく。
非臨床の段階で臨床に必要な要件っていうのを意識してできる。
K
基礎研究のスピードも精度もともに高めることができる。いい流れだよね。
I
「がん」は発生した部位によって、その性質、症状、進行など異なりますが、近年では特徴的な遺伝子異常など様々な指標によって細分化されていきます。
特定のがんに特徴的な分子メカニズムを発見できると、その特徴を標的とした新薬創出につながりやすいと思いますし、特徴を活かした薬理評価系を構築して薬の評価を行います。
例えば、肺がんで著名ながん原因遺伝子変異などは、既に多くの薬剤が創出されています。
一方で、未開拓の領域の標的では、メカニズム解析が十分でないことも多く、ここに難しさがあると思います。
K
加えて、がんの多様性や患者さんお一人お一人の遺伝的背景の違いもある。
I
そうですね。より複雑になる要因だと思います。
また、治療によっては、患者さんの体力が落ちてしまうことによって治療が継続できなくなったりします。正常造血をつぶさないけど、がんはつぶすみたいなターゲットは、やっぱり非常に難しいなって。
K
そうだよね。でもそういったいいターゲットが見つかれば合成の方で何とか化合物を取得しようと頑張ります。それも本当に大変ではあるんだけど…
I
ぜひ頑張ってください!
いい化合物ができると、薬理として評価するのはとてもワクワクしますし。
K
創薬化学は、初めは課題がたくさんあって、その課題を解決するために合成展開を進めると、最後は、モグラたたきみたいに、こっちがよくなるとこちらが悪くなる・・・という繰り返しで。
そこのバランスを取りながら、いかにヒトに投与してベネフィットがあるような薬に仕上げるのかといったところが、我々合成担当のミッション。
難しくもあり、そこが一番楽しいところでもある。薬理の方は、どんなところが楽しい?
I
そうですね・・・我々が取り組む血液がんでは様々な薬理評価手法が確立されていますが、より先進的かつヒト病態と相関性の高い評価系を創生する取り組みも行っています。
遺伝子編集技術を用いた化合物評価系の構築や特定の病態モデルの作製など、手探りで方法論を考えていますが、壁にぶち当たることもしばしば。
でもそんなときほど「新しいものを生み出している」という感覚があり、大きなやりがいを感じますね。
K
確かに、「新しいものを生み出す」楽しさは大きいね。
世界で初めての化合物を自分たちでデザインして合成し、そのSAR(構造活性相関)を見ながら薬へと緻密に仕上げていく過程は本当に面白い。
I
最適解を導くために、仮説を立てて検証する過程は、私にとってとても魅力的。
現象を解き明かすプロセスにのめり込みますね。
K
私の所属するモダリティ研究グループは、化学を基盤とした創薬研究と新規モダリティ開発を担う部門。メンバーは結構いろんなタイプがいて、バリバリ実験量で成果を出すタイプもいればじっくり思考するタイプも。
雰囲気は、和気あいあいとしていて、今、同じプロジェクトのメンバーと同室で研究しているけど、薬理からデータが返ってきたら「返ってきたぞ!」とみんな集まって結果に一喜一憂する。
薬理グループの方はどんな感じ?
I
同じく、慎重派と大胆派など、いろいろなタイプがいる。
うちは一つのテーマに何人もというよりは、一人ひとり違うテーマを担当しているため「来たぞ!」みたいな雰囲気にはならないですが。(笑)
私のグループは、血液がんに関する創薬研究と、臨床開発中の化合物「Enzomenib」や「Nuvisertib」のTR支援研究(トランスレーショナルリサーチ:橋渡し研究)をやっていて、みんな自律的に考え、気兼ねなく意見しあうといった感じ。
それをマネージャーがまとめてくれる。
K
バックグラウンドもいろいろ。私は有機合成系の研究室で天然物の全合成研究をやっていたけど、反応開発をしていた人やシミュレーションをやっていた人も。全員ケミストではありますが。
I
薬理も、みんなバイオロジストではありますが、がん研究をやっていた人ばかりではなく、筋肉やウイルス、脂質代謝など、いろいろな専門知識をもった人が集まっている。
そうしたメンバーの意見をアイデアに生かすこともあれば、外部からヒントを得ることもある。
K
外部からどのように情報収集している?
I
学会は気軽に参加できますし、むしろ「行ってこい」みたいな感じになることもあります。
直近では、アメリカの「血液学会」に参加する予定です。
開発初期の剤を担当する際には、SMPA(米国子会社)と連絡を頻繁に取り、研究内容についてディスカッションしますし、海外とのやりとも結構ある。
K
研究内容によっては、特定の技術を習得するために国内外へ派遣に行っている人も。
I
社員の成長につながるチャンスをもらえるのはありがたいことですね。
K
うちは子供が5歳なので、休日はもっぱら子供といっしょに遊びに行くことが多い。
そうなんですね。うちは、まだ1歳ちょっとなので、日々寝る時間が・・・。
そう、みんな育休取ってるよね。
休むときは「お互い様」という感じで、まわりが仕事を分担してくれている。
裁量労働制は、本当に助かる。うちは、朝、私が子供を幼稚園に送ってから出勤し、夕方、妻が迎えにいくスタイル。朝、たまに準備で遅くなる時も融通がきく。
自分自身の趣味、という面では、研究所にいくつかスポーツのサークルのようなものがあって、そこでフットサルやサッカーを楽しんでいて。
たしか何年も続いてる野球やテニスサークルとかもあるよね?
ええ、年齢層も広く、部署横断的に人と出会えるので、プロジェクトが進む前に、すでにその人を知っていることも。
それ、サークルじゃなくて、もう半分仕事?!(笑)
スポーツでリフレッシュしながらの社内交流ですよ。そういう時間もいいですよ。
これから挑戦したいのは、未開拓の評価技術や疾患モデルを自ら設計し、創薬のスピードと精度を高めること。特に血液がん領域で得た知見を活かしながら、より複雑な腫瘍環境を再現できるモデルや、臨床に直結する評価系の構築に取り組みたいですね。
目指すのは、血液がんのスペシャリスト?それとも評価系をつくるスペシャリスト?
どちらも、ですね。「がん治療に革新をもたらす」ことが、がん創薬研究ユニットのミッションですから、どちらも目指していきたいですね。
そのためにも探索合成も頑張らねば。一つでも多くの開発剤を出して、一つでも多くの薬を患者さんに届ける。化学はその出発点をつくるというところで、しっかりと今やっている研究をカタチにし、そのサイクルを回していきたい。
1剤出したら終わりではなく、周辺分野にも次々、ですよね?
そう。臨床に送り出し、薬となって世に出て、さらにそこから発展させるというよいサイクルを作っていきたい。
薬を育てることで、自分自身も研究者として成長できる。
いいね!
近場のイベントに行ったり、旅行に行ったり。子供が恐竜好きで、先日は福井の恐竜博物館にも行ってきた。
I
でも、子供の成長は目まぐるしく、それを見守るのは何よりの楽しみですね。
この子が生まれた後、2カ月ちょっと育休を取得しました。
その時点ですでに取得している先輩が多かったんで、めちゃくちゃ取りやすかったですね。
K
休暇中は会社のことはいいから、家族との時間を大切に、という考え方で。
I
また、裁量労働制なので出勤時間も帰宅時間も自分で調整できる。子供は急に熱を出すことも多いので、子育て世代にはすごくいいなっていうふうに先輩とも話していて。
K
I
K
I
K
I
K
こうした、薬を育てる土台づくりのスペシャリストになるというのが一つ目指すところかなと思ってます。
K
I
K
I
K
I
今後、チームや後輩の挑戦を後押しできる存在になることも目標です。
K
我々の挑戦が、患者さんの治療の新たな選択肢になるよう、チャレンジを続けていきたい。
I
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